10 1月

回復のためのチャレンジ

私は、10数年前に「心の病」と言われてきた人達との出会いがあったが、その時から一つの疑問があった。大胆に表現したい。それは、正直、薬が多いことであり、それにはおどろいた。
薬は「脳に直接働くデリケートな薬」であることは知っていた。そんな薬を重ねて何種類も飲む。脳によい影響をあたえるとはとても思えない。素人の私が考えただけでも、想像を超えていた。何年間、いや、今も「治療への疑問」は消えていない。日本の精神医療と現場の治療に対する疑問は続く。
私は、グレースハウスを始める前に、二つのテーマが当事者から与えられた。「作業しない作業」と「当事者主体とは何か」。一体、これは何を意味するのかと考えさせられた。どちらにせよ、何も知らない素人ではあるが、何かを考え、何かに取り組む決意がうまれる。日本の精神医療と行政施策へのチャレンジの幕開けであった。何をどう取り組んだらいいのかわからない。その中で、「病気の回復」と「人間性の回復」と言う二本柱となる理念を打ち立てた。それからの取り組みは、まず、なによりも、自分が、自分の状態をしっかりと把握して表現できるようになることである。これは、医師の治療に対して関心をもつことと同じである。自分が処方されている薬に対して、そして、副作用に対しても無意識、無関心、無感覚であると思えてならなかった。すべての人に当てはまることではないが、そうであってほしくないという私の気持ちが段々と強くなっていた。それが、私の取り組みに反映されることになる。
2012年が始まったが、上記の内容はかわらない。そんな決意をしていた私に、今日の朝日新聞の内容はこれからの取り組みに希望と勇気を与え、チャレンジを促す。是非、今年こそ、自分の回復のために参考にしてほしい人が、この中におられる。
そこには、治療がはじまり、11種類にも薬が増え、自分の感情表現まで奪われていくある男性とその妻がとった行動が紹介されている。今まで診察を受けていた医師に相談しても、相談にならないと判断した妻は、一つの決断をする。それは、回復しない夫に強くセカンドオピニオンをすすめることであった。今まで11種類ものたくさんの薬を飲んでいたが、回復しない。本人は、時に、急に薬をやめて幻覚・幻聴を体験する。本当に脳に働く薬の効果は、逆に大変辛い、言葉にならない苦痛を強いることになる。本人は、セカンドオピニオンを活用することになり、「大学病院で処方された一種類の抗不安薬で自然と眠れるようになり、5週間の休職で仕事に復帰できた。」とある。
病気の回復のためには、他の要素を含めたバランスが大切であるが、2012年の始まりにあたり、私たちの理念にセカンドオピニオンを加えたい。自分の病気と自分の人間性の回復、そして、未熟な精神医療(施策)と地域社会の変革のために…