16 10月

「愛の受け皿」

我が人生の受け皿には、周りから贈られた愛で一杯で溢れんばかりであります。
なんと幸いなる人生が与えられている私でしょうか。
溢れた愛が無駄にならないように、身近で遠くにいる隣人の愛の受け皿に、地域社会の愛の受け皿に、そして、家族等の愛の受け皿に受けとめられていくことを信じて祈るしかありません。
しかし、私が、この世界で一生涯取り組むことを決意する上で忘れてならないことが以下の精神医療とその基礎的裏づけとなる日本の政策的歴史の貧困さの中にあります。
その延長線上には、社会的愛の受け皿がなく、いやいや家族的愛の受け皿さえもなく、何十年間も精神科病院から退院できない人たちがいるという現実であります。
「入院患者が30万人、20万人が一年以上の長期入院という状況」「日本の精神科医療は、世界的に特異な位置にある。」「精神障害者を危険視する風潮が強かった高度成長期、国は補助金や低利融資で民間の精神科病院を増やした。医師の数を一般病棟の3分の1でよいなどとする特例を設け、安い医療費で隔離収容する状況を生んだ。」
『治療』ではなく、完全なる「隔離政策」である。“政府は、2004年、地域生活を重要視する政策を掲げたが、すすまなかった”ために、“現在も統合失調症などで5年以上入院する患者が10万人いる”のが現実であるのです。その中で、精神科医療病棟での患者の高齢化が大きな課題になっていることは、我々の周知するところであります。
愛の受け皿となっている君たちよ。忘れられた存在を増やすようなことに沈黙してはならない。
また、君たちの地味で、ゆるやかな取り組みが、国の政策・精神科医療の課題の変革への愛の受け皿となる重要な役割を果たしていることに気づいてほしい。
忘れないでください。君たち一人一人のそれらの意識的取り組みの積み重ねが、必ずや、今、取りまく現実的貧困と心の貧困の変革へのアプローチになっていることを。